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レインは、狼に気付いているのかいないのか分からないが、ずっと下に俯いている。すると、突然顔を上げ、狼を間近に見た。
一瞬間があった。そして急に狼達が弱腰になった。
レインの心の中は、村人への疑念と怒り、そして突如湧き上がった悲しみと言う感情で、頭が一杯だった。
―――「母さん・・・。」
そう呟き、レインの意識はそこで途切れた。
目を覚ましたのは、次の日の早朝だった。
ベッドから体を起こし、立ち上がり、リビングまで降りていくと、伯父さんが1人だけ座っていた。
「大丈夫か?」とレインを心配してくれる伯父さんに、申し訳無さそうに言った。
「はい・・・何かすみません、色々」
あの後、倒れたレインを家の中まで運んでくれたのは、伯父さんだった。そう思うと、なおさらバツが悪くなる。しかも、儀式に参加するための条件、「1人にならない事」を破ってしまった。
しかし伯父さんは、「気にするな、無事だったんだから」と、どこかくらい表情で言った。
「でも約束「レイン。」
突然言葉を遮られて驚いたが、伯父さんの方を見て、すぐ黙った。いつもより真剣な視線を真正面からぶつけてくる伯父さんに、レインは不思議そうに首を傾げた。
「何で・・・いや、どうやったんだ?」
伯父さんの質問の意味が理解出来なかった。もちろんレインは「何が?」と聞き返す。
「・・・覚えてないか・・・」
「えっ?」
レインは聞いたが、伯父さんは溜め息を付き、椅子から立ち上がった。―――が、
「お父さんとお母さんが倒れて・・・助けなきゃって・・・でも助けられなくて・・・僕が「もういい」
伯父さんが顔を横に振り、静かに言った。
――此処にはいられないかもしれない――・・・
ふと我に返ると、伯父さんが悲しそうな目で、今にも泣きそうだった。
――どうして?そんな顔しないで・・・僕は何とも無いから・・・お願いだから・・・・・・僕のせいで泣かないで――
「何で、そんな顔するんですか?」
つい思っている事が口に出た。
下を向くと、頬に何かが流れる感触を感じた。同時に、水?のようなものが零れ落ちる。泣いていたのはレインの方だった。
――悲しかったのは・・・僕か――
レインは静かに涙を拭った。
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