☔記憶の欠けら☔

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レインは、狼に気付いているのかいないのか分からないが、ずっと下に俯いている。すると、突然顔を上げ、狼を間近に見た。 一瞬間があった。そして急に狼達が弱腰になった。 レインの心の中は、村人への疑念と怒り、そして突如湧き上がった悲しみと言う感情で、頭が一杯だった。 ―――「母さん・・・。」 そう呟き、レインの意識はそこで途切れた。  目を覚ましたのは、次の日の早朝だった。 ベッドから体を起こし、立ち上がり、リビングまで降りていくと、伯父さんが1人だけ座っていた。 「大丈夫か?」とレインを心配してくれる伯父さんに、申し訳無さそうに言った。 「はい・・・何かすみません、色々」 あの後、倒れたレインを家の中まで運んでくれたのは、伯父さんだった。そう思うと、なおさらバツが悪くなる。しかも、儀式に参加するための条件、「1人にならない事」を破ってしまった。 しかし伯父さんは、「気にするな、無事だったんだから」と、どこかくらい表情で言った。 「でも約束「レイン。」 突然言葉を遮られて驚いたが、伯父さんの方を見て、すぐ黙った。いつもより真剣な視線を真正面からぶつけてくる伯父さんに、レインは不思議そうに首を傾げた。 「何で・・・いや、どうやったんだ?」 伯父さんの質問の意味が理解出来なかった。もちろんレインは「何が?」と聞き返す。 「・・・覚えてないか・・・」 「えっ?」 レインは聞いたが、伯父さんは溜め息を付き、椅子から立ち上がった。―――が、 「お父さんとお母さんが倒れて・・・助けなきゃって・・・でも助けられなくて・・・僕が「もういい」 伯父さんが顔を横に振り、静かに言った。 ――此処にはいられないかもしれない――・・・ ふと我に返ると、伯父さんが悲しそうな目で、今にも泣きそうだった。 ――どうして?そんな顔しないで・・・僕は何とも無いから・・・お願いだから・・・・・・僕のせいで泣かないで―― 「何で、そんな顔するんですか?」 つい思っている事が口に出た。 下を向くと、頬に何かが流れる感触を感じた。同時に、水?のようなものが零れ落ちる。泣いていたのはレインの方だった。 ――悲しかったのは・・・僕か―― レインは静かに涙を拭った。
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