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「おはよう、ツナも今来たのか」
随分遅れながら、嫌々学校に登校した俺が最初に見付けたのは、教室前の廊下で、窓の外を眺めて黄昏ていた巨漢の男。
我が親友、津波【ツナミ】、通称ツナの姿だった。
ツナは長身の体を屈め、長めな髪を風に揺らす。
「当たり、なんか雨降りそうやん」
「え?」
言われて覗いた校舎廊下から見える空は、快晴だ。
「何処が?」
「なんかそんな気がするだけ、嫌な気分やねん」
「へぇ……まあ大丈夫だろ、じゃあ後でな」
ツナの勘はよく当たる方だが……気にしても仕方ないので、適当に会話をすませ俺は教室に向かう。
まだカバンを置いてないし、置いてから担任に遅刻を報告しにいかなくちゃならん。
「お早よう」
「は?早くねぇーよ」
「おそよう」
「ま、どーでもいいけどよ」
「ならつっかかるな腐れ蜜柑」
「なんだよその悪口?」
「いい悪口が思いつかなかった」
「悪口もてけとーかよ、死ね」
今日二度目の会話がこれだ。
オレの虫の居所の悪さに拍車がかかる。
だがまあ、こいつの言う通り、教室の窓から見える太陽は、おはようと言うには高く上がり過ぎていた。
オレと会話が噛み合うのはツナだけだな。
机に寝そべり、意味無くトゲトゲしい態度で話す男は我が親友……いや、というか敵か。
そんな感じの友人、青【アオイ】だ。
機嫌が悪そうに口を曲げ、目を閉じたままアオイは唸る。
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