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第四夜目 出発、再開、そして…
指定の時間はその日の夜中9時、場所は日の出市の灯台であった、怒りを押さえながらも龍はいつもどうりに夕方5時までの診療を終える…
『はい、加藤さんもう大分良くなったね、後は栄養付けて運動すれば元気になるよ、一応いつもの薬は出しとくから、ちゃんと毎食後に飲むんだよ。』
『ありがとう、いつも先生にはお世話になるね、この島も観光地になったのは良いが若者はみんな都会に出て行ってしまって、今じゃ先生と数人のしか残ってない…それに、この町で唯一の診療所をわしら年寄りは本当に頼りにしているし、何より先生には感謝してるんじゃよ。』
『そんな僕は医者としての仕事をしているだけですから、ただみなさんがその用に思ってくれていると思うと本当に嬉しいです。』
と、優しい笑顔で加藤に話した。
『さってと、じゃわしは帰るかの、治療代はいくらかな?』
治療費を貰い、帰る加藤に薬を手渡す、待合室まで出て来るとベルが尻尾を振りながら加藤に近寄って来た。
『よしよしベルちゃん、可愛いね、また来るからね。』
そう言ってしゃがみ込む、ベルは愛くるしい顔をして加藤を見つめている龍はベルに話しかけた言葉に対して…
『その時は病人では無く来て下さいね。』
『はい、それでは…』
ベルの頭を何度か撫でた後立ち上がり家へと帰って行った、最後の患者を見送った後診療所を閉める龍、やっと今日が終わったのだ、そしてこれから裏の仕事が始まるのであった、時計をチラット見て直ぐに自分の部屋に向かう、そして着てる白衣を投げ捨て黒のロングコートをまとった、この姿は寿命師として出掛ける時の格好で朝外を出歩く時と、部屋で待機する以外は身につけている、特別な意味はあまりないが本人が落ち着くらしい、それに性格が変わるスイッチにもなるようだ、後ろから来たベルもこの姿を見るとあまりジャレなくなる。
『待ってろよ北村、今行くからな。』
自宅の玄関から外に向かう間もベルはいつもより少し離れてハッ、ハッと息をしながら付いてくるが龍が出かけるのが解るらしくいつも玄関から先には来ようとはしない、そんなベルを抱き上げて…
『行って来るね、留守番よろしく。』
と問いかける、ペロっと龍の顔を舐めるとおとなしくなる、ベルを下ろし玄関から出ようとするが一つだけ凄く気になる事があった
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