輝く命と錆びる命

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少女は、風がよく通る崖に立っていた。 そこから、穏やかに波打つ海を見下ろしていた… ザザー…ザザー…。 海からは無数の白い手が伸び、手招きをしているように、少女には見えた。 おいで…こっちの世界においでよ… 風の音に、低い声が混じっていた。 少女は、絶望していた。 この世のありとあらゆるものに… 愛し信じた人に裏切られ、深い悲しみと傷を負った。 彼女は、悲しみに打ち勝つ方法をついに思い付かなかったのだ…。 ザザー…ザザー…。 引き潮になってきた海を眺め、少女は歩き始めた。 一歩…二歩…三歩…。 あと一歩で楽になれる。 少女の顔には笑みがあった。 さよなら…くだらないこの世…。 少女が四歩目を踏み出そうとした時。 バサバサバサッ! 少女の目の前に、一羽の鳩が降り立った。
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