輝く命と錆びる命

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怯んだ少女は、手で顔を覆い、歩みを止めた。 鳩は、“降り立った”のではなく、正確には“落ちてきた”のだ。 右翼の真ん中辺りが、血で赤黒く染まっていた。 少女は、助けようと鳩に近付いた。 が、バサバサバサッ! 鳩は、それを拒んでいるかのように羽ばたきをした。 少女は、それを見て差し延べた手を引っ込める。 鳩は自力でどうにかしようとしているとわかったからだ。 その代わり、少女は心の中で、頑張れ!頑張れ!と応援した。 バサバサバサッ!バサバサバサッ! 鳩は二度羽ばたきをして、そして… バサバサバサッ! 三度目の羽ばたきをして、青く済んだ空に飛立っていった。 太陽の眩しさに目を細めながら、少女は鳩を見ていた。 見えなくなるまで、ずっと…ずっと…。 少女はその間に考えていた。 あんなケガを負った鳩だって、懸命に生きようとしている。 それも自力で。 私ももう一度生きてみようと。 あの鳩のように…。 強く…懸命に…
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