プロローグ~告白は厳かに~

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「何でもする、と言いましたね?」 菱沼はそう言うと、懐から名刺入れを取り出し俺に一枚名刺を渡す。 「今週末に、その名刺を持ってラウンドセクトの受付に行きなさい」 「あ、あの、どういう事ですか?」 「学校から紹介できる仕事はありませんが、私個人のつてがあります。正直、あまり一般人には薦めませんが今時兄弟のために何でもすると言える君の心に打たれました。」 「先生っ!」 自然と涙が溢れてきた、学校の仕事としてでなく俺のために自分のつてを使ってくれる先生への感謝で。 「うまく行けば、採用されるでしょう。採用時には幾つかの行動制限と守秘義務を守れば家族の事は面倒見てくれるでしょう。私からも口添えしてあげましょう。」 「はい、ありがとうございます。」 感謝で一杯だった、この時俺に僅かでも冷静さがあれば行動制限が発生する仕事に疑いを持ったはずだ。しかし、俺は仕事の内容も聞かずに進路相談室を後にしていた。
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