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私とお兄ちゃんは離れ離れになるんだよ。夜中に言っていたもの。
もうすぐサヨナラなんだ
木から降りた瞬間、離れ離れになるかもしれない。そうなるのが怖いの。だから帰りたくない、降りたくない。
「わがまま」
「わがままだもん」
降りたら違う世界が広がってお兄ちゃんはいなくなる。そう考えたら
怖くて
お兄ちゃんが両腕を延ばす。私はその手を見つめながらゆるく首を振った。
終わっちゃうんだよ
会えなくなっちゃうんだよ
「早く帰ろう」
私がもっともっと小さな頃から聞いてきた声。何度怒られたかな。何度褒めてくれたかな。
離れたく
なんかない
それでも手は差し延べられるから
私は木を蹴ってゆっくりと下降した。冷たい風が頬を滑って空に吸い込まれる。
暗闇の空へと
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