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子供たちが帰り四十九日の法要も終わり、季節は再び春を迎えようとしていました。
治平さんは相変わらず偏屈爺さんで近所のおかみさんたちにも恐れられていました。
長男の一郎も次男の二郎も長女の昌子も末娘のみどりも全員が何度も同居を申し出ましたが、住み慣れた家を出たくない、仕事場を捨てられないと耳も貸しません。
昌子が置いていった携帯電話もいつしか充電もせずに放置するようになりました。
幸い仕事を持ち込む古い得意先の中村さんにだけは口をきくので、仕事だけは黙々とこなしているのでした。
毎朝暗いうちに起きだしトミさんの仏壇(何と治平さん手作りです)に線香をあげ、適当に食べ仕事を始めたら誰が来ても一言も口をきかない毎日が過ぎていきます。
治平さんには季節の移ろいや人の喜怒哀楽など関係なくなりました。
午後には散歩がてら買い物に行きますが誰とすれ違っても達磨さんのようなギョロ目で睨み付けて通り過ぎるだけです。
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