マゲラッパ!

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  暫くして、知らない番号から着信が入った。 「お。…もしもし?今、白楽の駅前ですが…」 「あ、志乃ちゃんの携帯ですか?天津の迎えの者ですよー。駅前のどこですかね?茶色のローレル、見えますか?」 ローレルは確か、角張ってて平べったい車だった気がする…いや、そんな形容詞しか浮かばないんだ。車なんて興味無かったし。 「あ、居ましたねー。…窓から手振ってるんだけど、見えるかな?」 「あ、はい。白いシャツの…」 「そうそう、オバチャンね。早くおいで。」 切れた。 つか、志乃ちゃんて。 名前言ったっけ?   手招きされるまま、後部座席に乗り込む。 「あ、自分は上田…」 「上田志乃ちゃん。19XX年生まれの現在17歳。生まれてすぐ父とは離別、生死不明。よって家族構成は母ひとり。16歳で高校中退、他は学歴・賞罰共に問題無し。射手座のA型、好きな食べ物は味噌ラーメンとなめ茸オムレツ。」 !? 「だよね?」 「…です。」 運転席で満面の笑みを浮かべているオバチャンに、ただ俺は頷くしか出来なかった。 「これがウチの仕事…の、ひとつ。かなちゃんは情報のプロだからね。」 車が発進する。 「かなちゃん?」 「奏でる手って書いて、かなたちゃんって言うの。可愛いわよね。」 天津奏手とは、アマツカナタと読むらしい。 発進したばかりだと言うのに、赤信号に捕まる。 減速し、ゆっくり停止。 「奏手、さん…が、その、人事の担当の方ですか?」 1本の電話で、どれだけ調べられたんだ? つか、上田家秘伝(か、どーかは知らんが)なめ茸オムレツがバレた! 「人事…まあ、そうだねえ。あ、ちょっとスピード出すけど、早いの怖かったら目隠ししてね。」 手渡されたのは、あの、洗顔とかする時のヘアバンド。 信号が青に変わる。 車体がガクンと揺れる。  
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