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理由は分からないけれど、チェシェ猫に触れていると安心できてしまうアリスはのんびりと下に降りるのを待っていた。
「ねえチェシェ猫さん」
「なんだい、アリス」
「私、重くないかしら?」
「………」
チェシェ猫は笑顔をぴくりとも動かさないまま黙ってしまった。
それに軽いショックを受けたアリスはチェシェ猫の首にまわしていた腕を解いてしまった。
「重いのね?それならいいわ、降りる!」
顔を微かに赤く染めて眉を寄せ、ここが空の上だと言うことも忘れてチェシェ猫の胸を押す。
ぐらりと体勢が崩れて、アリスは再び顔から血の気がひいた。
(そういえば空の上だったわ!)
そのままチェシェ猫の腕から落ちそうになると同時にアリスの身の周りの魔法の光が消え、アリスの頭の中には【絶体絶命】の文字が浮かんだ。
「きっ…」
息が喉で詰まってアリスの口からは擦れた声しか出なかった。
次の瞬間。
アリスは強く抱き締められる感覚と体温を感じた。
アリスはチェシェ猫に強く抱き締められており、再び身に淡い光に包まれながらアリスの顔はチェシェ猫の胸に埋まっていた。
「ご、ごめんなさい…チェシェ猫さん…」
チェシェ猫の服の胸の部分が、涙で濡れていった。しゃくりを繰り返し、チェシェ猫の服を力一杯握り締めながらアリスは自然と溢れてくる涙を流し続けた。
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