65人が本棚に入れています
本棚に追加
「ごきげんよう」
真っ黒なスカートの両端を手で掴み、軽くお辞儀をしてにっこりと微笑むのはもう身についたモノ。
世間でお嬢様学校と一目置かれている白戯学園の中は、私みたいに堅苦しく挨拶をする人でいっぱいだ。
「疲れるわ…」
放課後のチャイムが鳴り響く中、ほとんど誰も来ない第4図書館の扉を開いた。
そこは、いつも通り静かで。
でも、いつもと違うのは、奥の机の上に誰かが座っていること。
窓の方角を向いていて背中だけしか見えないけれど、背の広さや髪の短さで男性だと分かった。
(どうして私服の方がここにいるのかしら…)
不法侵入者なら先生方に知らせなくてはいけない、と、小さい頃から教えられた事が頭に浮かんだ。
けれど、見覚えのない男性がそこにいるだけで独特の雰囲気が流れて、そんな気は起きなかった。
私は静かに扉を閉めて、扉から一番近い机に歩み寄った。
「こんにちは、アリス」
「えッ?!」
「君を待っていたよ」
暗い紫色の髪の毛をした独特の雰囲気の男性が振り向いて綺麗な笑顔で、黄色い瞳で私を捉えた。
「アリスって…私?」
何故か心搏数が高くなる心臓は聞こえないふりをして、他に誰もいないのかを確かめてから紫色の髪の男性に問う。
最初のコメントを投稿しよう!