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「そうだよ」
紫色の髪の男性の平然とした答えにアリスと呼ばれた少女は首を左右にふった。
「私はアリスじゃないわ」
「アリスだよ」
少女の台詞直後に男性は言い切り、少女は次第に困った顔つきになっていった。
「どうしてそう思うの?」
「その綺麗な青い瞳を観れば簡単さ」
「これは…お母様が外国の方だから…」
困り果てている少女の容姿は、少し日本人離れしていて美しい顔立ちだった。
瞳はビー玉のように青く、その瞳を澄んだ色に見せるかのように真っ黒な髪を長くのばしている。
また、男性が静かに口を開いた。
「本が消えてしまうよ」
「本…?」
「アリスは不思議の国の主人公だよ」
「主人公って…そんなの、知らないわ…」
いきなりの事で少女は完全に頭の中が混乱し、ぎゅっと拳を握った。
「分からない、分からないわ!貴方は誰なの?!私はアリスじゃないんです!」
普段おしとやかな少女は出来る限りの大声を出して叫んだ。
叫び慣れていない少女は肩で息をしながら泣きそうな表情で男性を見た。
「チェシャ猫だよ」
チェシャ猫と名乗る男性は質問にしか答えなかった。
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