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「チェシャ猫さん…?変わったお名前ですね…」
やっとまともに言葉のキャッチボールができて力が抜けたのかアリスは再びチェシャ猫に興味を持ち始めた。
ゆっくりと遠慮がちにチェシャ猫へと歩み寄り、チェシャ猫が座っている机の正面にある椅子を引き寄せて、チェシャ猫の背中と対面になるように座った。
すると、チェシャ猫も態勢を変えてアリスと向かい合わせになった。
(やっぱり、綺麗な御方だわ…でも…)
アリスはチェシャ猫に違和感を覚えていた。
初めて顔を見たときから、チェシャ猫は笑顔を崩さないのだ。
「ねえチェシャ猫さん」
「なんだい、アリス」
「どうして貴方はずっと笑っているの?」
もともと好奇心旺盛なアリスは、疑問に思ったことをすんなりとチェシャ猫に聞いてみた。
チェシャ猫は相変わらずの笑顔で少し黙って、こう答えた。
「チェシャ猫だからだよ」
(全然答えになっていないわ…)
がっくりと肩を落としたアリスはもう、頭の中にあった困惑がすっかり消えていた。
「アリス、白ウサギを追い掛けよう」
「白ウサギ?どうして?」
「不思議の国だからさ」
机から立ち上がろうとするチェシャ猫を、アリスが阻止した。
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