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「………。」
チェシェ猫は笑顔のまま否定も肯定もせず黙ってしまった。
「…1人は嫌よ…」
「ワカラナイ。」
「え?」
アリスが悲しそうに呟くと、チェシェ猫がカタコトな口調で答えた。
アリスは不思議そうにチェシェ猫を見てから目を閉じて首を左右に振って、それからチェシェ猫を見つめた。
「誤魔化そうとしているのね?」
「…アリスは主人公。
物語はアリスのもの。
アリスがいないと進まない。」
「私の…もの?」
チェシェ猫が頷いた。
アリスは眉を寄せて視線を下に落とし、胸の前で片手を握り椅子から立ち上がった。
「私がいないと…始まらないのね?」
またチェシェ猫が頷いた。
「あなたも、私が行く物語の人物なの?」
「チェシェ猫だよ」
「…チェシェ猫も、登場するの?」
アリスは言葉を言い換えて穏やかな表情でチェシェ猫に聞いた。
チェシェ猫は頷いて、机の上からふわりと飛んで床におりた。
(…見た目は人間なのに、目の前で人間離れの事をされると…)
「思い知らされるわ…」
独り言を呟いたらチェシェ猫の笑顔が不思議そうにしているように見えた。
その様子をクスリと笑って見ていると、すっとチェシェ猫が自分の胸の前に手のひらを上にして伸ばした。
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