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「白紙じゃない」
「アリスがいないと始まらないからね」
「…そうなの…?」
主人公の重要さがいまいちよく理解しきれていなかったアリスは、少し胸が痛んだ。
「あの…チェシェ猫さん、ごめんなさい。さっきから私、自分の事ばかりで…」
「アリスは悪くないよ」
落ち込んでいるアリスの頭をチェシェ猫が小さい子にするように優しく撫でた。
チェシェ猫に触れられた途端アリスは落ち込んでいた気持ちが綺麗に無くなり、代わりに胸が高鳴った。
「ありがとう、チェシェ猫さん…」
アリスが少し頬を赤く染めてとても嬉しそうに微笑んだ。
だが、その微笑みは本に小さな亀裂が入ると同時に消えてしまった。
「本が…!早く、早くしないと…」
アリスは焦るばかりで、何もできない。泣きそうな声を出しながら縋るようにチェシェ猫を見た。
「アリス、本の表紙に触れてごらん」
チェシェ猫が開いていた本を閉じて、表紙をアリスに向けた。
「……分かったわ」
正直アリスは不思議な事が起きている本に触れるのは恐かったが、自分のせいで物語に住んでいる人達が消えてしまうと考えてしまえば、その恐怖は小さかった。
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