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シュバルツは一人、自室で自分がこれから指揮をとることになる艦の名前に頭を悩ませていた。
軍部を追い出されはや10年。当時二十歳だったシュバルツも、今や三十路の大台に乗り、風貌や雰囲気に貫禄が出てきた。
「小佐、そちらに入ってもよろしいでしょうか?」
自分の机の右角にあるモニターに、メリッサの顔が映し出された。
彼女はシュバルツよりも若干年上で、32歳となっていた。
「別に構わないよ」
シュバルツは、机の上に散らばった書類をまとめ、引き出しの中に入れると、メリッサに自室に入る許可を出した。
ドアのロックを解除して、メリッサが入って来る。
「………さっきまで散らかってましたね?小佐」
まるでつい数十秒前の情景を、メリッサはいとも簡単に見抜いた。
「貴方の悪いところは、物を乱雑に扱う事です。もう少し丁寧に使われるようにすべきだと、私は思いますが」
階級差など関係無く、スバスバとものを言う。
「君の悪いところは、そういう人間だと分かっていながら物を渡すところだね。自分で始末をつけるようにすべきではないかな?」
負けじとシュバルツも反撃を試みる。
「貴方は艦長ですから、書類にはどんなに些細な事でも目を通す義務があります」
「分かっているよ、中尉。そんなにカリカリするな、シワが増えるぞ」
軽く殺気を込めて
「だったらカリカリさせないようにして下さい」
そう言った。
流石にシュバルツも地雷を踏んだ感を感じて、それ以上何も言わなかった。
「ところで小佐。艦の名前、お決めになりましたか?」
「その前にメリッサ。ここでは敬語は使わなくていいぞ」
すると、
「そっ、ありがとう。それで本題。名前決めた?貴方が決めるって言ったんだから、もう決まってるでしょ?」一気にラフな言葉になった。
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