プロローグ

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光に包まれ、爆散した艦隊の奥からソイツが高速で飛び出してきた。目的はただ一つ。自らの姿を撮り続けている生き残りの艦だ。 近付いて分かるのは、ソイツの目が真紅に輝いていることだ。 「総員退艦せよ!総員退艦せよ!」 艦長の退艦命令が出されると共に、艦内が慌ただしくなり、赤いランプと警告音が鼓膜を破りそうな音を奏でている。 艦の側面後方のハッチが開き、まるで稚魚が卵からかえるように脱出ポッドが出ていく。 同時に、艦橋に残った艦長は砲撃手席に座り、主砲を機動。艦首の先が開き、筒状のものが一つ出てきた。 そこに光が溜まっていく。 その光が膨れ上がり、前方に迫りつつある物体に向かって発射される。 しかし、ソイツは羽を羽ばたかせると上に向かって回避、そのまま光を発射、一瞬にして艦を脱出ポッドを飲み込み、宇宙に広がる一陣のプラズマへと変えた。 その光景を自らの瞳に写し、ソイツは漆黒の闇へと姿を消していった。 その光景を、ただ一人奇跡的に助かった通信兵により記録され続け、超空間航法により銀河連合軍に届けられた。 もっとも、それはソイツとの接触から一年も後になってしまった。
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