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「ただいま。」
鬼ごっこを終え、家のドアを開けて言う。
すると、僕の声に気付いた初音が痛い片足をあげながら、ケンケンで僕に近付き抱き着いた。
「お帰りなさぁい♪」
僕の胸に顔を埋める。
そんな初音の頭を、僕は撫でた。
「ただいま。無事に帰って来たよ。」
笑顔を向ける。
「父さん、お帰り。」
僕達の声に気付いた一真が、二階からおりてきた。
「何か変わった事はなかったかい?」
二人に尋ねる。
「あ…実は母さんに携帯奪われた。」
言いにくそうに一真が言う。
「携帯?一真の?」
僕は眉間に皺を寄せた。
すると
「いや…何つーか…その、俺が鬼から奪ってきた携帯。」
頭を掻きながら言う。
一真のその言葉を聞いて
「そうか…。」
僕は呟く。
梓に鬼の携帯が…。
僕は自分の身体から初音を放し、風呂場に直行。
服を脱いで裸になり、シャワーの蛇口を捻る。
そこから流れてくる、お湯を頭から被りながら目を瞑った。
鬼の携帯が梓の手に…。
ひょっとしたら、梓は鬼に携帯を渡したのかも。
それなら急に、鬼が追い掛けてこなくなった理由も解る。
あの空白の時間に梓と鬼は接触したんだ。
その間、一真と初音は何を?
あんだけ梓の事を頼んだって言うのに…。
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