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…―――― 灰色のビルが立ち並び、道路はいつ舗装されたのかわからないほど荒れ果てた街の残骸。 人っ子1人居ないのが常識とも言えるそこには、現在場違いな少年が1人。 消えそうなくらいポツリと、しかし力強く立っていた。 「寒ぃな……」 今は真冬から明けたばかりの、しかも雨気のある曇り。 小さく呟く彼は少し身震いをした。 すぐに不機嫌そうな声で、その呟きは吐き捨てられたのだけれど。 「ミッションは、どうなりましたか?」 向かい側に立つ営業員風にスーツを着た男が問う。 「まったく。聞いているのか?」と、言わんばかりに。 不機嫌なのは俺のほうだ、と少年は思って笑う。 からかってやろうか。 「あんまり上手くいかなかったんだよなー……ンだよ、そんな顔すんなって」 からかいは予想以上の効果だったようで、目を見開く相手に苦笑して、少年は手の中の物を放る。 銀色の立方体がきれいな放射線を描いて宙を舞う。 男は、慌てた様子でそれを受け止めた。 これこそ一番欲する物、その中には大量のデータが収められているのだから。 男は深く嫌味ともとれる息を吐いて、 「……ご苦労様です」 少年をチラリと睨み、そのたった一言を置いて物静かに去っていった。 「はぁ…。あんな風で疲れねぇのかな、奴サンは」 男の遠のく背を見つめて呟く少年。 明らかに嘲りの入り交じったカラカラという笑い声は、寂れた街に、静かに染み渡っていった。  
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