一 全滅の村

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「それが分かっててあいつらだけに行かせるかよ。───案内には正徳達を行かせるよ」 「正徳達?」 「龍造の妹歩美さんの娘の瑞穂君と達江(たえ)の次兄達芳君の息子季達(ときたつ)君、我が息子正徳とその妻の嘉美君さ」 「・・・・・・大丈夫なのか?」  訝かる槇田に徳篤は苦笑いした。 「おいおい、忘れたのか?正徳は剣の腕が立つし、妻の嘉美くんは土御門流陰陽師後藤家当主晶泰の娘だ。それに、瑞穂くん家はあの『趙家』一族だぞ。季達(ときたつ)くんは正徳に負けない剣の腕がある」 「あぁ、あの後藤家と進藤家の!」 「因みに、瑞穂くんはあの家では珍しく女の子で『龍』を宿しているようだ」 「それを聞いて安心したんだが・・・・・・俺達も危ないんじゃないか?」 「そう思ってな、ここに来る前に嘉美くんから拝借してきた」  おい、と後ろに声をかけるとそこに二つの霊体が現れた。いきなり現れたので、槇田は驚いて声を上げてしまった。 「お前から向かって右が安藤長門守範頼(あんどうながとのかみのりより)、左が和田右京大夫謙宗(わだうきょうだいふかねとき)といってな。二人とも、嘉美くんの式神さ。今日から俺たちの護衛についてもらおうと思ってな」「・・・・・・流石安倍晴明の血を引く後藤家というところか」  槇田は落ち着きを取り戻すと、式神和田右京大夫謙宗は槇田に恭しく挨拶した。 『ご紹介に預かりました和田右京です。本日より、この右京が槇田様の護衛をさせていただきます』  一歩進みでた和田右京が言った。 「右京くん、頼んだよ」 『お任せくだされ徳篤殿。我が主の義父君(ちちぎみ)なれば、なおのこと』  右京大夫謙宗は微笑んだ。 「謙宗さん、お願いします」
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