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槇田は最大の敬意を表して右京と握手を交わした。
「終わったか?」
突然知らない男の声が聞こえ槇田が驚いてその方を向くと蒼髪で朱眼の男がそこにいた。ついさっきまでいなかったのにいつの間にか彼はそこにいた。
「いたのか、破龍よ」
「おう。最初(はな)っからな」
破龍と話していた徳篤は、きょとんとしてこちらを見ている槇田を見て自分の失態に気づき、彼を紹介してやった。
「彼は破龍。龍造の『宿龍』だ」
「槇田皓治といったな。主龍造の命で、俺もアンタの護衛に就かせてもらうことになった」
進藤家の龍を自分のそばに置くことはなんとも心強いが、一つ彼には気がかりなことがあった。
「・・・・・・それはありがたいのだが・・・・・・それで龍造は平気なのか?」
心配する槇田をおかしく思い、徳篤は笑い飛ばした。
「あいつはどこぞの馬の骨にかかって死ぬタマじゃねぇよ。そんは馬鹿どもはアイツが一族秘伝の技でも使って追っ払うさ。それに、〝奴の龍はこいつ一人じゃない〟しな」
「ならいいのだが・・・・・・」
なおも不安な顔をする槇田に破龍が、徳篤と同じような事を言った。「我が一族の事を知らないならいざ知らず、知ってる奴らがそんな自殺まがいな事はしない」と。それを聞いて、槇田の顔が幾分晴れた。
暫くして、徳篤は席を立った。
「槇田。もう俺は帰るけど、念の為、用心だけはしておけよ」
「あぁ、分かっている」
槇田は彼に約束した。帰り際には破龍と和田右京にくれぐれもと念を押していった。
槇田はどっかりと腰を下ろし、深く呼吸をした。真っ白な天井を見ながら、彼はこれからこの事件は一体どういった道筋を辿るのだろうかと想像した。
できることなら、自分の力を使って事件を解決したい。しかし、自分にはあまりにも無力であった。いかに自分がこの国の首相であったとしても、ある種の超常的な力の働いたこのような件については全くの専門外である。いや、自分にもできそうなことはある。が、今はその時ではないだろう。その時が来るまでは待たねばならない。
今の槇田には、彼らが無事に事件を解決に導いてくれることを祈るしかなかった。
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