二 幕開け

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 吉倉と神原は群馬の県境にある喫茶店の駐車場で人を待っていた。  昨日、上司である佐々木徳篤警視総監兼警察庁長官に電話報告した際に 「明日、群馬の県境で少し待機していてくれないか?案内を寄越すからそいつらと行ってくれ」 と言われたからだ。 「案内って、一体誰っスかね?」  車の中で菓子パンを食べながら問いかける神原が吉倉に訊いた。食べながら口を開くなと、吉倉の手刀が神原の額を襲った。 「何でも、俺のよく知る奴らって言っていたんだが・・・・・・・・・」  煙草を吹かしながら吉倉は答えた。車内に煙が籠らぬよう、窓は開けている。  口の中に溜まった煙を外に吐き出し、煙草を口にくわえようとしたその時、一台の黒の乗用車が駐車場に入ってきて、彼らの乗る車の二つ先の駐車場に止まった。 「あれか?」  黒の乗用車のドアが開き、中から四人の男女が姿を現した。その内の一人、短い黒髪の青年がこちらに向かって手を振ってやって来た。 「吉倉さん」  青年の声を聞き、彼の顔を見た吉倉の顔に笑みが溢れる。彼は吹かしていた煙草を灰皿で消し、ドアを開けた。 「正徳君じゃないか。そうか、警視総監が言っていた案内って、君のことか!」  彼らは互いの手を取り合い再会を喜んだ。久々に会った青年正徳はあの頃より大分(だいぶ)逞(たくま)しくなっていて、頼りがいがある男のように感じた。 「お久しぶりです。その節は大変お世話になりました」 「いやいや。俺はあの時、正徳君の指示に従っただけだよ礼を言うのは俺の方だ」  喜びあっている二人を、神原は車の窓越しに不思議な表情で見ていた。  そんな二人の所に残りの三人も合流してきた。「君達もか」彼らの顔を見た吉倉の喜びは尋常ではない。 「あの・・・・・・えっと・・・・・・先輩?この人達は?」  車から出てきた神原がたまらず吉倉に質問した。吉倉は彼を見、次に正徳達を見てあぁと唸り、神原の肩を叩いた。 「悪かったな。紹介しよう。まず、こいつは佐々木正徳(まさのり)君。警視総監の息子さんで警視だ。次に彼女は後藤嘉美君。こちらの正徳君の妻で警部、そして陰陽師でもある。次に彼女は進藤瑞穂君、進藤龍造氏の姪に当たる人だ。それで彼が神戸季達(ときたつ)君。神戸達江さんの甥御さんだ。昔とある事件で知り合ってな。それ以来の付き合いになる」
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