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できればそれだけは考えたくは無かった。もし予感が当たってしまえばこれは予想以上に難を極める事件に発展しかねない。その場合、これは国家が関係しているかそれなりの規模を持った団体・組織の仕業以外考えられない。
これほどの事件を引き起こすには何か壮大な理由があるだろうが、一体何の為なのかさっぱりである。もっとも、そんな理由、分かろうとする気は毛頭無いのだが。
「正徳君、君はどう思う?」
彼は他の者達に今回の事件をどう思うか訊いてみることにした。
「そうですね……。実を言うと、私も吉倉さんと同じ予想が頭に浮かんでいるんですよ」
瑞穂達に訊いてみたが、彼女達もどうやら同じ結論に達していたらしい。吉倉はあぁと唸ってソファに倒れこんだ。
正徳はおもむろに手に提げていたビジネスバッグから数枚のを取り出して、それを机の上に放り投げた。それは何かの書物を印刷したようなものだった。
「六十年前の記事です」
彼は端的にそう言った。
『―――明朝の惨劇起こる
本日未明、長野懸蔵澤村にて、村人が全員死亡しているのを、同村の住人滝田豪太郎氏(三十)が発見した。懸警の調べによると、死亡した村人は奇妙な死に方をしていて、全員が同時刻に死亡していたと言う。滝田氏の話によれば、昨日同氏は隣村の華苗村(かなわむら)に仕事で昨夜から出かけていたのだが、その時はいつも通り村人は元気であったという。懸警は警視庁と協力して事件の犯人を捜している―――』
記事はある新聞の一部であるとあらかじめ正徳は断っておいた。それ以外の紙には、それに関するその他の新聞や雑誌の記事であるそうだ。どの記事も似たり寄ったりな内容しか述べられておらず、これ以上のことは望めないと踏んだ吉倉達はその記事を机の上に置いた。
これは相当めんどくさいことになりそうだと、吉倉はうんざりと肩を落とした。
「総監に相談しようかな?」
「それが賢明でしょう。ただ、父も狙われているようですから、連絡を取ったほうがよろしいでしょう」
頼めるかいと吉倉が言えば、正徳はすぐに父徳篤に連絡を取った。
「おかしいな……繋がらない」
暫く経って発せられた正徳の第一声に、吉倉達は一斉に訝った。
「電波が届いてないんじゃいの?」
瑞穂がそう指摘するも、正徳は携帯画面を見せてそれを否定した。
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