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彼女は名を風龍といい、進藤家の異能の力である炎の源『宿龍』の一人である。どういった経緯で彼ら一族にこのような力が使えるようになったのかは不明であるが、それは彼らの祖先である趙雲子龍が某(なにがし)という刀匠に作らせたといわれている、進藤家の宝槍『龍牙』に関係があるらしい。
本来、『宿龍』は進藤家の人間の体内に宿っているのだが、風龍のような例外もいるらしく、彼女達は主である進藤家の家に住み彼らの世話をしている。
「ありがとう」
礼を言って、吉倉はゆっくりとそれを啜った。他の者も、彼に倣って出されたお茶を啜る。
一服したところで、吉倉はこれまでの経緯を簡単に龍造に説明した。彼は何度も頷きながら吉倉が語る場面を頭の中に描いていた。
龍造は創造しながらその片隅に六十年前の未解決事件に関する記憶が蘇ってきていた。当時の彼はまだ腕白小僧。事件はただ恐ろしいなと感じた程度だが、時が経つに連れてだんだんとその意識が変わっていった。何とか解決できないものだろうかと。
その思いもあってか、彼は吉倉の申し出を快く聞き入れた。
「ふん、どこの誰だか知らんが、神をも恐れぬ所業をしでかしてくれよったわ」
憤慨の念を露(あらわ)にする龍造は、机の上に置かれていた調査書に眼を通して、それを風龍に手渡した。六十年前といい、二十年前といい、今回といい手口や内容があまりにも似すぎている。気味悪くてしょうがない。
だいたい、村に関する資料が何一つ無いとは一体どういうことか。ますます気味が悪い。
「この件には、俺達には予想できない大きな力があるようじゃな」
「どうやらそのようです。事件はそこに鍵がありそうです」
吉倉は自分の見解を述べた。
「まずは一度本件をじっくり考える必要がありそうですね」
「あぁ、それはいいのだが………」
季達(ときたつ)はちらっとある人物に眼を向ける。その人物は我関せずといった感じで風龍に持ってこさせた菓子をつまんでいた。
「ツッコんだら負けよ?季達(ときたつ)君」
「あぁ知ってる。この後の展開もね」
そう、李達が言ったすぐ後、龍造が投げた盆が見事瑞穂の顔面に直撃し、更に追い討ちをかけるように澪龍の拳が彼女の脳天に振り下ろされた。
「瑞穂ちゃん。お菓子ばっか食べてないで少しは話に集中しなさい」
「瑞穂。お前少しはしっかり参加せんか馬鹿者」
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