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風龍はドアを開けて激走する車のボンネットに立つと追ってくる数台の車に向かって反撃を開始した。
「風王・昇天波」
振り払った手から出現したのは巨大な竜巻と強力な突風で、それらが追っての車を巻き上げ、大地から離れさせ、遥か彼方までそれらを吹き飛ばした。さながら米国のハリケーン並みの威力のそれは周りの木々も一緒に吹き飛ばしてしまい、その辺一体だけ中年親父の寂しい頭のように何もなくなってしまった。
「……あらあら。少しやり過ぎてしまいましたわ」
(……少しどころじゃないと思うのは気のせいかな??)
しかし決して口にしない。変なことを口にして彼女の逆鱗に触れてはこの先やっていけない気がする。
「てか、……ここどこっスかね?」
周りを見回している神原は、ここははたして群馬の高崎に本当にある山なのだろうかと疑いたくなった。闇雲でたらめに直感だけを頼りに来た道だけに、もしかしたら別の所に出てしまったのかもしれないと思ってしまう。
「さあ……あら?」
何気なしに見回した先に何かを発見した風龍は、そこまで歩いていきその何かを拾い上げた。
「慶三様」
彼女が呼ぶので、神原はそこまで歩いていった。
彼女が拾い上げたのは木の看板であった。どうやら、先程の風龍の突風でも吹き飛ばなかった強者らしく原形を保ったまま、根を地面に埋(うず)めたまま倒れていたらしい。
『ここは仔峯山』
看板にはそう書かれていた。
「すごいですわね慶三様♪」
風龍は素直な気持ちを述べた。彼には特殊な何かが宿っているのではないかと本気で思えた。彼には一般人ながら天性の才能、それも本人が気づかないくらいの特殊能力に違いない。ただ本人は喜んでいいのか分からず戸惑っている。
とにかく目的地には着いた。後は『神門(みかど)』なる山小屋を目指すだけなのだが、それには今現在自分達がこの仔峯山のどの辺りにいるのか把握する必要があるのだが、彼らにはその術(すべ)が無い。大体、『神門(みかど)』がどこにあるにかさえ分からない。
「困った………」
「困りましたわね………」
レンタカーも先程の無茶な運転でエンジンが悲鳴を上げており、これ以上は動かすことができない。つまり、ここから歩いて謎の襲撃者達から逃れつつどこにあるか分からない山小屋を目指さねばならないのだ。
「はぁ………」
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