12人が本棚に入れています
本棚に追加
やるせない状況に、神原は思わずため息をついた。はてさてどこをどう行こうか。
「とにかく歩きましょう?話はそれからでしょう」
風龍の促しをその通りと受け取り、神原は歩き出した。
先刻、風龍が派手に木々を吹き飛ばしてくれたおかげで、夏の日差しがさんさんと容赦なく彼らを照りつけてくる。その日差しは神原の体力を徐々に奪っていき、彼は止まることなく溢れ出る汗を拭いながら不明の目的地を目指していた。
とうとう神原は道の途中に生える大木の影の下にどっかり腰を下ろした。
「む、無理~~………」
そのまま倒れこむ神原に風龍が涼しい風を送って、熱した身体の温度を少しずつ下げてやる。心地よい表情を浮かべながら彼は涼んでいた。
脳内温度が正常値の戻ったところで、二人は今後について話し合いを始めることにした。闇雲に歩いていた結果、神原がぶっ倒れる寸前になってしまったので、ここはしっかりとした計画を立ててから行動したほうがよいと言う結論に至った。しかし、『神門(みかど)』に関する情報はこちらに一切無い。
「……どうしましょうか?」
「風龍さん。風で探査できないんですか?」
「生憎と、私の風は攻撃に特化しておりまして……。申し訳ありません」
「いや、風龍さんは悪くないですよ」
人には向き不向きがあったり無かったりなどと頭の中でよくまとまっていないまま口にするので、文法がしっちゃかめっちゃかになりながらも頑張って彼女を励まそうとしていた。彼女は彼の頑張りを見て元気を取り戻したようで、天使の笑みで彼に返した。その笑みに、神原は危うくそれに瞬殺されそうになった。
(あれは……ヤバすぎる)
しっかりと脳内カメラで激写して永久記録したわけだが、それはさておき彼はとにかく現在位置を知りたかった。
パ―――――――――ン
無音のこの仔峯山に無気質な銃声が響いた。鳥獣達がざわめき出す。
二人の身体は自然と音にする方へと走り出していた。
直感が、その先にこの事件の鍵を握る人物がいると彼らに訴えかけていた。さっきまでの疲れがうそのように軽い身体を動かす神原は持ってきた拳銃の撃鉄(ハンマー)を引き起こしておいた。ついでに、薬莢(やっきょう)の数も確認しておいた。
「これ、始末書書かされるかな?」
「大丈夫でしょう。暎柾様や正徳様はきっと分かってくださいますわ」
「そうだといいんだけど」
最初のコメントを投稿しよう!