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二人は現場に到着した。そこには、大怪我を負っている少女と彼女に拳銃を向けている数名の男共がいた。
「警察だ!お前ら、銃を置いて手を上げろ!!」
「慶三様、無駄ですわ!」
神原が名乗りを上げた途端、連中は一斉にこちらに銃口を向けて発砲してきた。あわや凶弾が当たる前に風龍が風の盾でそれらを全て防いでくれた。
「連中はあの襲撃者と同じ仲間と思われます。説得は不可能です」
ご丁寧な説明をしてくれる風龍に感謝しつつも、神原はこの凶弾の嵐をどうにかしてほしかった。おかげで、あの少女から連中の視線が逸れたことは幸いだったが、その結果がこれでは下手をすればミイラ取りがミイラになりかねない。
「何とかして!!」
神原は無力な自分が情けなくも思えたが、今はそんなことを言ってる暇はない。
「はい。―――鎌鼬(かまいたち)!!」
無数の旋風の刃が男達の身体を襲い、ズタズタに切り裂く。殺すことは無く、しかし重症の傷を負った彼らはその場に倒れ痛みにのた打ち回っていた。
すかさず神原は彼らに当て身を喰らわせ、気絶させ、すぐに重症の少女の元に駆け寄った。
彼女の傷自体は大したことは無いが、何分傷の数が凄まじく失血量も半端ない。これはすぐさま止血しなければこの少女は死んでしまうが、彼らは治療器具を持っておらず、しかも迷子の体たらく。いずれ少女は死んでしまう。
「慶三様。ここは私に任せてください」
暢気にそんなことを言う風龍に彼はあたふたとしながらそんな世迷言言ってないで早くこの少女を病院に運ぶ手を考えるように叫んだ。
「慶三様?私が何なのか、お忘れですか?」
すると、風龍のかざした手から淡い炎が出るや、少女の身体を優しく包みみるみるうちに彼女の傷が塞がっていった。それを見ていて、神原はようやく彼女が何者なのかを思い出した。彼女は『四家』の一つ進藤家の当主龍造から自分の護衛にと就けられた『宿龍』であることを改めて思い出したのだ。
「私は他の皆さんと違って、主にサポート役の部類ですので、この程度の治療は朝飯前なのですよ」
余裕の表情で笑む彼女を、神原は頬を赤らめて慌てて視線をはずした。あれは彼に言わせれば超ド級がつくほどの反則技で、今後の捜査に支障をきたす位危ないものだった。
「慶三様。ひとまずこの子をどこか安全な場所まで運びましょう」
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