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「貴方達は……私の手紙を読んだの?」と。
彼女の言葉に我に返った神原は、ポケットに手を突っ込みしわくちゃになった紙切れを取り出して「やっぱりこれは君が書いたのか?」と問い返した。彼女からの返答はYES。
彼には分からなかった。何故彼女はこんな面倒なことをする必要があるのだろうか。そんなことをするのであれば直接あの時我々にコンタクトを取ってもよかったのではないか。第一、何故彼女はあんなに傷だらけになる必要があったのか。そもそも彼女は一体何者なのだろうか。
「何故こんな回りくどいことを………??」
神原はなるべく優しく理由を訊いたが、華奈未は無言で俯いてしまい、その答えを聞くことができなかった。困った神原であったが、だからと言ってこんなどことも分からない場所でいつまでも留まってるわけにもいかなかった。
しかし、ここは仔峯山のどこなのであろうか。
「――――ここは一旦戻った方がよさそうですね」
風龍がぽっつりと呟いた。
「戻るって……どうやって?」
「龍造様の家は私の身体に記憶しておりますから、ご安心ください」
「……そう。じゃあお願いします。先輩達に中間報告ぐらいしておかないと」
「それがよいでしょうね。このままでは私達もあの連中に襲われてしまいますからね」
二人の会話が分からない華奈未はきょとんとして彼らの様子を見ていた。この人達は一体何を言っているのだろうかという眼で彼らのことを見ていた。
「華奈未ちゃん、こっちに来てくれ」
神原に呼ばれた華奈未は一瞬躊躇ったが、彼らが『奴ら』のような極悪人ではないと分かったので素直に彼の側へ寄っていった。
寄って来るや、彼は自分にしっかり捕まるように言ってきた。首を傾げて何を言っているのかと思っていると、突然無風だったこの場所に風が吹き始めた。始めはたまたま吹いたものかと思ったが、それはまるで意思を持ったかのように自分達の周りに寄ってくるではないか。いかも、勢いを増している。
「しっかり捕まっていてくださいね?」
言うや早いか、その風は一種の竜巻となって自分達を巻き上げた。
「!!!!!???」
華奈未の驚きは言うまでもないだろう。なんせ自分は今未知の領域である『空』にいるのだ。しかも、神原と名乗る男や風龍(フォンロン)という女は全く平気な顔を浮かべているではないか。
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