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肩の上に座り込むリートへそう告げて、湿った土の上を歩き出す。
途中で肉食動物に出会ったらいいこと教えてやろう。
このまま真っ直ぐ進んで、少し開けた場所に食料が転がってる。
密猟者だから思う存分苦しめてから食ってやってくれ、って。
「レイン、一つお願いがあるんだけど」
肩の上の猫は淡々とした調子でそう言った。
茂る草木を避けながら歩きつつ、猫の続きの言葉を待つ。
「僕ね、街に出たら久しぶりにお腹いっぱいご飯が食べたいな。生のお肉とかまずい木の実とかじゃなくって、ちゃんとお店で売ってるようなご飯」
……その口調は淡々としたものだけど、こいつぜってー内心で切れてる。
ほとんど嫌味が言いたいだけなんじゃないのか、こいつ。
「悪かったね……お腹いっぱい食べさせてやれないほど貧乏で」
逆に皮肉で返してやったら、リートは肩の上で遠慮もなく頷いた。
「本当にね、駄目なご主人様。収入といえば強盗みたいな真似して手に入れるお金ぐらいだもんね」
……しょうがないじゃん、まさか働くわけにもいかないし。
それに強盗みたいな、っつーか完全に強盗なんだけどね……人を殴ってその所持金いただくのって……。
どうやら見知らぬ肉食動物へのプレゼントよりも、このわがままなお嬢様の空腹をなんとかせねばならんようだ……さっさと歩いて街に出よう……。
じゃないとこのまま延々と耳元で文句を言われ続けることになりそうだ……。
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