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湿った土を踏みしめて、最後の一人となった男に視線を向けてやる。
土と同じく湿気を含んだような空気には、今や濃厚な血の香りさえ感じられる。
足元で気絶している五人の男の位置を確認――うん、このまま最後の一人に向かって走っても特に問題はなさそうだ。
障害になりそうな身体は一つもない。
ついでに最後の一人とのだいたいの距離を測る――うー……ここからだと……歩幅にして二十歩くらいかな……?
けっこう遠いな……。
最初の一人から拝借した右腕を軽く持ち直す。
肩と接合していたはずの部分から血が舞った。
ついでに左手のナイフも軽く振るい、既に渇きかけた鉄分たっぷりの液体を空中へ放る。
「……ひっ……」
最後の一人にはそれが攻撃の前兆にでも見えたのか――ライフルを握りしめながら情けない声を漏らした。
……あんまり長い間生かしておくのも可哀想かな……。
やたら脅えられちゃってるし……。
でも怖がってる奴を前にしてその反応を楽しむってのもまた面白く……いやいや、こんな考え持ってたらどこぞのお嬢様のことを悪く言えなくなっちまう。
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