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斬り取った右腕を頭上にかざしながら姿勢を低くする。
見上げた先には最後の一人のどこか安堵しきったような表情があった。
たぶん、ライフルを撃てたことで完全にオレを仕留められたと思い込んでいるのだろう。
馬鹿め、銃弾ってのは撃った瞬間じゃなくて対象に当たって初めて役を果たすんだよ。
そこまで思って最後の一人の浅はかな安堵に舌打ちしかけた瞬間、頭上の肉塊が弾けた。
細かな肉片や右腕に残っていた血が落ちてくる前に再び行動を開始する。
右腕をうち捨てる瞬間、色をなくしたその肌に銃創を確認。
よかった。
貫通の跡は見られない。
流れ弾や跳弾がそこらにいるであろうお嬢様に命中でもしたら困るもんな……。
空になった右手を濡れた地面に押し当て、その反動と両足の力で再び体勢を立て直す。
ほとんど同時に残りの十歩を駆ける。
目前に迫った男を軽く見上げ、ちょうどオレの目の位置にある迷彩柄の衣服にナイフを添える。
ナイフの切っ先が厚い衣服を貫き男の皮膚に触れると同時に左手を盛大に横へ滑らせる。
手に伝わるのは、薄い肉を斬った感触と、息づく男の身体の動き。
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