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ライブが終わり外に出るとチラチラと小粒の雪が待っていた。
地面に薄く雪が積もっていた。
私は木の下にたたずんでその雪を眺めて故郷を思い出してまた泣きそうになってしまう。
東京の雪はなんて寂しげにこんな小さな粒で舞い落ちてくるんだろう。
故郷の雪とは大違いだった。
すると遠くの方から視線を感じそちらの方を見るとなんとカズが外に出て私を見ていた。
私は咄嗟に逃げるとすごい勢いで追い掛けてきた。
ズデンッッ!!
私は雪に滑って思い切り転び足を挫いてその場にうずくまってしまう。
「挫いたのか…乗れよ」
そう言ってカズは私に背中を向けた。
カズが私をおんぶしてくれるなんて、そう思ったら緊張してしばらく間抜けに立ち尽くした。
カズ優しくて私を待っていてくれた。
私はかなり恥ずかしかったがカズの背中に乗った。
暖かくて広い男の人の背中。
私が感激して言葉を無くしていると、カズが口を開いた。
「君は可絵なのか…?」
私はそれを言われて鋭いナイフで切り裂かれるような気分だった。
この人も中学の時の先輩と同じ。
結局この人も可絵のことしか見てないのよ。
そう思うと悲しくてその場で泣き喚きそうだった。
私は最寄りの駅に送ってもらいカズと別れた。
もう会わないほうがいいのかもしれない。
これ以上傷つくのはごめんだわ。
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