第一章 同じ顔をした天使

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私は東北のある田舎の一角に生まれた。 その2ヶ月後に私の母の姉つまりは叔母が小さな女の子を産んだ。 私からすれば従姉妹が同じ年で生家は近所だったので幼稚園から同じところに通うことになった。 それが悪夢の始まりだったことを私はまだ知らない。 物心が付いたとき既に私と従姉妹・可絵(かえ)との間に大きな違いがたくさんできていた。 顔はみんなが驚くくらい似ているのに性格は恐ろしいほど正反対だった。 可絵は明るく自由奔放で友達が男女問わずたくさんいて伸び伸びと育ったことに対し私はと言うと…。 隠見で暗く消極的で自分の世界を作りがちでみんなが近づきがたい友達がいない淋しい子に育ってしまった。 可絵の両親は外科医で父親は東京の病院に勤務していて、母親は地元で一番大きい病院の外科医としてバリバリ休みも惜しんで働いていた。 ほとんど家にいない母親だったので、可絵は毎日のように家に泊まり一緒に幼稚園も小学校も行っていた。 元々、可絵は未熟児で生まれ心臓に疾患があると診断され可絵の両親、私の両親から腫れ物に触るように甘やかされて育った。 可絵の心臓は徐々に心臓の機能が衰える難病。 可絵はそんな難病にも負けず健やかに元気に育った。 中学校に入学し、そこでもすぐに友達ができた可絵。 私も好きな先輩が出来た。 毎日嫌いだった学校も楽しく行けるようになった。 なぜならその先輩が私を優しい顔で眺めてくれるから。 これは私の錯覚じゃない。 事実だ。
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