梅雨

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それは弾丸のような雨の日で。 あなたを待ちわびて時計を睨む。 大好きな英語の教科書だって今のあたしには呪文にしか見えない。 パラパラとページをめくりは閉じ、めくりは閉じ。 弾丸の音に混ざり自転車の鈍いブレーキ音。 そっと両手を添えて窓を開ける。 真下には愛しいあなた。 雨で濡れたその真っ白いシャツが背中に張りつき綺麗な肌の色が露になる。 指が滑り自転車の鍵をかけられないあなたのしかめっ面が愛しくて 前髪からポツポツと滴る雫に妙にドキドキさせられて あたしは窓を静かに閉め階段をゆっくり降り しかめっ面のあなたの後ろにたった。
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