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次の日総司は蘭に自己申告をした。
隣に立って。
どうせ知られる事ならば自分から話した方が利口だと考えたのだ。
それはこんな風に。
「今日の体調は良好です。昨日は8時に寝ました。洗濯はしていません。朝ご飯はまだです。パンツの色は水色です」
そこまで話すと蘭は言った。
「…聞いてないです」
確かに。
そしていつもの様に。
「今日は水色よ、良かったわね。岸田総司くん」
…………あれ!?
…何故知っているのか。僕は名前を教えた事はない。
そして彼女は店を出た。
そんな勘違いから総司の彼女に対する憶測は確実な物になった。
いや、それ以上。
…むしろ透視とか通り越して…魔女かもしんない…
総司は不思議で仕方なかった。
しかし未だに彼女がクラスメートだと言う事に気づかない彼の方が不思議でならない。
そしてそんな生活はしばらく続いた。
最後の方になるともう自分の事を話すと言うよりは、毎日パンツの色を報告している様にしか見えなかったかもしれない。
と言うか、パンツの色しか報告しなくなっていた。
彼自身、どうして自分が毎日そんな事をしているのかも解らなくなっていた。
そう、だからアホなんです、僕。
気づけば季節は冬になった。
周りの生徒はみんな衣替えをし、冬服になる中、しばらくは彼一人、夏服のままだった。
流石に寒さを感じ、総司はタンスからセーターを出そうと思ったが、見当たらない。
しまった場所は忘れてしまった。
仕方なく、買いに行く事にした。
店に着くまでは何色にしようか、考えたのはそれだけ。
わくわくしながら決めた色はお気に入りのピンク。
しかし店に着くと色は三色。
紺、黒、白。
散々文句を言いながら結局白の前開きのセーターを購入した。
帰りはもうやる気なし。
ふらふらと家まで帰ると、ある事を思いついた。
翌日、彼のセーターの右胸の辺りには、ズボンのお尻にあるのと同じキャラクターのアップリケが付けられていた。
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