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総司はいつもの様にコンビニへ向かって歩いていた。
毎日、お菓子を買い、占いのラッキーカラーを見てちょんまげを結うゴムの色を決めていた。
このコンビニには彼の一日の運命がかかっていた。
ある頃からそこで僕の愛読する占い雑誌を読む女の子がいた。
僕は毎日、その子の隣で同じ雑誌を広げる様になった。
その間約五分。
興味のない僕は顔すら覚えなかった。
只、そこにいつもいる人、とだけ認識した。
それは実に半年に渡って続いた。
最近は僕の中である競争心が芽生えていた。
如何に彼女より早くその雑誌を手に取るか。
毎朝家を出る時間は変えられない。
これまで守ってきた秒針のルールをここで変える訳にはいかなかった。
自分で決めた事に負ける気もしたし、ある意味もう、秒針のジンクスなんて言う物まで確立していた。
仕方ないのでいつもより早く歩くしかなかった。
むしろ小走りだったに違いない。
しかし未だ、彼女に勝利した事はなかった。
覚えている限りこの半年間一度も。
本当は僕は楽しみだったのかもしれない。
どうすれば彼女より先に雑誌を手にする事が出来るか考える事が。
しかし転機はそれからすぐに訪れた。
いつもの様にコンビニの雑誌コーナーへ向かった僕。
クマさんの黄色いマイバックを片手に。
するとやはり彼女の姿があった。
…今日も負けた。
そこで僕のやる気は使い果たされた。
それはいつもの事。
彼女の隣に立ち、無造作に雑誌に手を伸ばす。
ペラペラとページを捲る。
隣から声がする。
「あたしより早く来たいなら、そのクマさんの中身買う前に読んだら?占い」
………………その通りだ。
僕は彼女をシカトした。
彼女は何も言わず、店を後にした。
僕は今日、初めて気づいた事が2つ。
お菓子を買ってからここに来ていた自分に気づかないほど自分は間抜けだった事。
それから彼女が僕と同じ柄の制服を着た女子高生だった事。
気づくの遅くないですか?両方とも。
そして決意した。
明日は先に本を読もう。
それからラッキーカラーのオレンジのゴムで髪を結い直し、僕もコンビニを後にした。
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