第三章:剣魔

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二人は演習場の前までやってきた。 ラウルはまだぶつぶつと何か言っている。 アベル「ほら!入ろう。」 ラウル「で、でもぉ……」 アベル「ドア開けたらいきなり攻撃してくるって言ってただろ? しっかりしないと殺されるぞ。」 半ば強制的にラウルは首を縦に振った。 アベル「よし!んじゃ入ろう。」 ガチャ……… アベルはゆっくりドアを開けた。 それと同時にラウルは身構えた。 先生「来たか……」 予想とは違い、先生は床にどっしりと座り込んで攻撃してくる気配すらなかった。 ラウル「あ、あれ?」 しっかりと身構えていたラウルは緊張を切らした。 先生「心配するな。バスターとは戦わないよ。お前以外の実力は分かった……… お前の明日からのパートナーはもう決まっている。 お前には違う目的で来てもらったんだ。」 ゆっくりと先生は立ち上がり二人の元に歩みよってきた。 そしてアベルをジッと見つめて言った。 先生「剣魔になって私と戦え………」 アベル「!?」 ラウル「ど、どうして………」 いくら統一戦争を駆け抜けた戦士[破王]のミルファ先生でも、裏で統一戦争を誰にも悟られずに支えたアベル相手に力をセーブして戦うことなどできるはずがない。 しかも、殺人マシン剣魔になれば己の意思で止めることもできない。 アベル「だ、ダメです。いくら先生でも危険すぎます。 突然どうしたんですか!」 アベルは焦りを隠すことができない。 剣魔の力でまた人を殺してしまったら今度は立ち直る自信がない。 先生「剣魔の力がどのくらいのものなのかを見るだけだ。」 アベル「剣魔の力は俺の力で止めることができません。もしものことがあったら………」 アベルの言葉を遮るように先生は二本の小型注射器を出した。 先生「これは剣魔の力を止める鎮静剤だ。 これをお前にうてば剣魔の力は強制的に治まる。 これを私とバスターが一つずつ持ち、危険を感じたら使う。」 ラウル「俺もっすか?」 ラウルは注射器を手に取った。 先生「ああ、頼むぞ。」 先生はラウルの肩に手を乗せた。
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