#1 猿人

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  ジジ、というノイズが爽やかな田舎の早朝に響き渡った。 『○○市役所、教育課からの連絡です。本日、小中学校は休校になりました。くれぐれも登校しない様に、保護者の皆様からも声かけを…………』 氷室市の一角に在るスピーカーから報告の放送が淡々と繰り返される。 「……マジでっ!?」 それを聞いた誰もが思うように、砥部 千夏〔とべ ちなつ〕は驚いていた。 ――ガッコが休み! 小学4年生である。嬉しくないワケがない。 この時は、その理由を不思議に思ったりはしなかった。 ぱたぱたっ。 「ねぇ、千夏姉ちゃん。今日休みだってよ~!」 履いたスリッパを鳴らしながら、弟のショウタが顔を見せる。千夏は顔をしかめた。 「うっさいなぁ。あんだけ大きな放送なんだから、聞いたって」 「もう少し寝れるじゃんっ!ラッキぃ♪」 はしゃぐショウタ。 まだまだガキで煩いね。 「…ショウタ。今日はウチらと遊ぶんでしょ?」 「あ。そうだった!」 「忘れてたの!?」 「うん」 素直に答える弟の頭を撫でつつも、千夏はため息を吐いた。 ――素直だけが取り柄か! 「…あと誰か誘うんだっけ?」 「うん。友だち2人だよっ」 「おけぃ、じゃあさっさと準備しなよ~」 「はいは~い。ご飯食べてくる!」 ぱたぱた…。 去り行く弟の足音を聞きながら、電話の方へ足を運ぶ。 誘いの電話を今からかける。 成り行き任せが千夏の信条だ。 ――みんな、どうせ暇してるだろうしね。 その考えは正しいのだけれど、後々に後悔することになるとは……誰も知らない。  
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