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ジジ、というノイズが爽やかな田舎の早朝に響き渡った。
『○○市役所、教育課からの連絡です。本日、小中学校は休校になりました。くれぐれも登校しない様に、保護者の皆様からも声かけを…………』
氷室市の一角に在るスピーカーから報告の放送が淡々と繰り返される。
「……マジでっ!?」
それを聞いた誰もが思うように、砥部 千夏〔とべ ちなつ〕は驚いていた。
――ガッコが休み!
小学4年生である。嬉しくないワケがない。
この時は、その理由を不思議に思ったりはしなかった。
ぱたぱたっ。
「ねぇ、千夏姉ちゃん。今日休みだってよ~!」
履いたスリッパを鳴らしながら、弟のショウタが顔を見せる。千夏は顔をしかめた。
「うっさいなぁ。あんだけ大きな放送なんだから、聞いたって」
「もう少し寝れるじゃんっ!ラッキぃ♪」
はしゃぐショウタ。
まだまだガキで煩いね。
「…ショウタ。今日はウチらと遊ぶんでしょ?」
「あ。そうだった!」
「忘れてたの!?」
「うん」
素直に答える弟の頭を撫でつつも、千夏はため息を吐いた。
――素直だけが取り柄か!
「…あと誰か誘うんだっけ?」
「うん。友だち2人だよっ」
「おけぃ、じゃあさっさと準備しなよ~」
「はいは~い。ご飯食べてくる!」
ぱたぱた…。
去り行く弟の足音を聞きながら、電話の方へ足を運ぶ。
誘いの電話を今からかける。
成り行き任せが千夏の信条だ。
――みんな、どうせ暇してるだろうしね。
その考えは正しいのだけれど、後々に後悔することになるとは……誰も知らない。
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