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考えて考えに耽ってみるが、如何せん情報が少な過ぎる上にどうも頭の回転が悪い。
ふと感じた違和感はなんだろう。思って、すぐに気付く。
音が無いのだ。
“静か”のそれとは全く非なる。
風の音、虫が蠢く音、遠くからの残響。それらの“在って当然”という微かなモノさえ無い、これは異形だ。
(あたしの耳がおかしくなったのか…な……?)
これは無いだろう。
しかし、先程の自分すら信じられない衝動に駆られ――鳥肌がうぞりと立ち――単純明快。
声を出してみることにした。
「……お腹すいた…」
言葉の意味や内容は置いておくとして、これが自分の声なのだろうか?
ひゅぅひゅぅと鳴るそれは、ひどく掠れていて奇妙に聞こえる。
“ここで突然
スピーカーから男の声が――”
なんていうベタベタな展開を、意外にも望んでしまった。
今は自分しか居ないという事象自体が恐ろしさを増すことに成りかねないのだ。
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