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何事かと思った。
起こる事象全てがあたしの範疇を超えている。
何も、為すことができない。
ぶるぶると震える手の甲で顔を拭い、少し落ち着いて開いた眼に――悪夢が映る。
「……ぃヤっ…!!」
手で再び眼前を覆う。
ゴツリ。ガン。ゴリッ…。
連鎖するように音が鳴る。
あたしは、叫びすらできなかった。
恐ろしさに身が竦む。
たった今不意に墜ちてきた“それ”は限り無く人間のそれであるカタチを持っている。
だくだくと漏れる赤黒い粘着のある液体が流れ出す。
吐いてしまいたい。
『人間』が…
…墜ちてきた。
それは自分の末のようで、
よくわからなかったけれど、
自分と同じモノだった。
真っ白の部屋の中では異質で、
唯一生きていた証を持っていた。
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