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ギュゥとまぶたに力を入れて眼を瞑り、耳を塞いで体を極力縮こめた。
僅かに開いた唇の隙間からは、
「ぁ…あぁぁ…ぁ…ああ…っ」
という掠れた叫びが漏れるだけだった。
誰も助けてくれやしない。
自分が誰かわからない。
気味が悪過ぎた。
ワケがわからなかった。
ただ、目の前の事は全て現実味を帯びていた。
あろうことか人山から呻きが漏れてきた――これすらも。
『う…え……
うえぇぇ…!
ウエ、カラァ……!!』
歯を噛み締めて空を見上げる。
そうしなくてはいけない、気がした。
空では白が光り、あたしの眼を刺し、それが陰った。
「……ッ!!?」
あたしの真上に、人が在った。
能面のような白く単調な顔。
歯がニタリと見える。
眼がニタリと嗤う。
全く、意味の無い笑みだった。
ドッ
グチャ…
叫ぶ暇すら与えられなかった。
激しい衝撃、打撃感、頭部への痛み。
更に更にと押し寄せるそれらに圧迫され――
意識がぶつりと途絶えた。
~終~
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