#2 呪転

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  煌々と冷たく赤い――血のような光を放つ月が全てを照らす。 霧が何かを掴もうとする夜に。 私は走っていた。 ザザザッ 足がひどく重くて持ち上がらない故に、引きずるような音が響いている。 荒い息が白く模様を描いた。 「はぁっ、はぁっ。ぜぇ……」 頼るモノも無い孤独な時――。 草も風も空も土も、私を追ってくる。 カゲが私を追っているのだ。 逃れる術は無いのだ、と。 わかっていた。  
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