#1 猿人

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  ありえない。 ありえてはいけない。 これ、日常でしょ? あんな生物が実在するわけないじゃん。 猿のような剛毛に身を包み、瞳があるハズの所には闇が渦巻くのみ。 薄い唇はどす黒い赤で、口角をつり上げている今は鋭過ぎるほどのキバが覗く。 骸骨に皮が張り付いたくらいにガリガリで、その皮は生きているモノの色ではない濃い紫。 だらりと垂れた腕とほんの少し曲げられた膝。 全てが『悪』で、それは『死』だった。 存在すら生命の倫理に反するソイツ――。 けれど……あたし達の目の前に、それは実在した。 直感で。本能で感じた。 “決して交わってはならない。近付くな。” どす黒く吐き気を催すオーラといえばいいか。 それが、あたしの肌に嫌というほど染み込んだ。  
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