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ありえない。
ありえてはいけない。
これ、日常でしょ?
あんな生物が実在するわけないじゃん。
猿のような剛毛に身を包み、瞳があるハズの所には闇が渦巻くのみ。
薄い唇はどす黒い赤で、口角をつり上げている今は鋭過ぎるほどのキバが覗く。
骸骨に皮が張り付いたくらいにガリガリで、その皮は生きているモノの色ではない濃い紫。
だらりと垂れた腕とほんの少し曲げられた膝。
全てが『悪』で、それは『死』だった。
存在すら生命の倫理に反するソイツ――。
けれど……あたし達の目の前に、それは実在した。
直感で。本能で感じた。
“決して交わってはならない。近付くな。”
どす黒く吐き気を催すオーラといえばいいか。
それが、あたしの肌に嫌というほど染み込んだ。
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