幻影

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幻影

  行けども行けども、一向に霧は晴れぬ。 されど一度(ひとたび)立ち止まれば、瞬く間に足元が埋もれ沈んでゆく。 ならば進む他なかろう。 彼の者が造り出したものは幻影であった。 故に辿り着ける筈はない。 その存在は幻なのだから。 ならば何故目指し進み続けるのか? それは思考を持った人間だからだ。 立ち止まってはならないのだ。 沈み、思考を奪われる。 思考を失うことは、則ち死なのだから。  
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