戦線境地

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戦線境地

      永遠に報われない魂が 這いずり回り 足を取る 空は灰に染まり 渦を巻く 兵役の兄は今何処(いずこ)   父と母は弾丸の餌食になり 灰と化して風に舞う 幼い私は裸足のままで さまよいながら 死をさがす     帰れない哀れの魂が 顔面めがけ 飛んでくる 土は赤に染まり 煮えたぎる 兵役の兄は今何処(いずこ)   育った家は骨だけになり 黒く焦げて傾き寂れる 幼い私は視界を失い 手探りながら 無をさがす     道ゆく人々は自我もなく ただ惹かれるように 死へ向かう     帰れない哀れの魂と 交ざり混ざって 形をなくし 色さえ失くせば 無が広がる 戦死の兄は今何処(いずこ)   食物もなく痩せほそり 骨と皮のヒトガタよ 幼い私は動けなくなり 独りきりで 死に帰る      
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