でぶ兎と呼ばれた子

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 スカーレッド家で嵐の日の事件があってから十五年が過ぎていた。あの赤子はスカーレッド家の我が子としてすくすくと成長し、今日もまた産みの母親の墓の前で祈りを捧げている。  カレンの頭に石が当たった。間髪入れず砂利の雨が降る。彼女は今日も虐められるのだ。 「でぶウサギ逃げるのか?」 その意地悪いだみ声に周りで傍観する少女達が気に障る笑い声を挟む。カレンはまたいつものように囲まれたのだ。それは彼女にとって日常茶飯事だった。  静かなスカーレッド家の居間にも悪童達の声が響いた。聞き慣れた我が子の叫びが耳を咎める。 「またあの子が」 心配するアニタに対してギロンは呆れ返り、一口茶をすする。 「放っておけ。庇ってばかりではあの子のためにならない。無視することも教えなければいけないよ。あと数年であの子もどこかの嫁さんになることだし、大人にしてやるのに多少厳しくしてもいいだろう。なあ?」 ギロンは反駁する妻をよそに我関せずを決め込んだ。
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