でぶ兎と呼ばれた子

3/9
2409人が本棚に入れています
本棚に追加
/924ページ
 カレンは転ばされた。膝を酷く擦りむく。耐え慣れた痛みが頭を突き刺す。年下のがき大将に率いられた性悪なちび達が石をぶつけてくる。それを嘲笑しながら見ている同い年の少女達が憎たらしい。  彼女らはいつもよそ行きのおしゃれを決め込んで「でぶウサギ狩り」を眺め、年上の若者が声を掛けてくれるのを待っているのだ。皆綺麗な顔をしているのがなお腹立たしい。 「母ちゃん呼べよ。あっ、ごめん。あんたの母ちゃん偽物だっけ」 取り分け意地の悪い顔をした一人が嫌みたらしく彼女をなじる。少女達が一層馬鹿にして笑う。 「に、偽物なんかじゃない……」 一斉に石つぶてが降る。カレンはその痛みに身を縮めて耐える。頭さえ守っていれば少しの傷くらい平気だ。 「黙れ、お前悪魔の子なんだろう。大人達もそう言ってるからそうなんだ」 付和雷同して口々にカレンを蔑むような言葉を投げかける。加減を知らない分、その言葉は大人達よりも残酷で冷血だ。カレンは自分の腕に深く爪を立てて耐えようと必死になる。彼女が張り巡らせた心の壁は容赦無く剥ぎ取られていく。
/924ページ

最初のコメントを投稿しよう!