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夕暮れが深まり、皆が家路についていた頃、バーバラは双子の天幕の前で考えあぐねた。ウィーナが彼女に気付いて顔を出す。
「あいつ、いる?」
「兄さんなら二階にいると思うよ。私はアナの所に行く予定だからゆっくりしていって」
天幕の中はまるで地震で被災したかのような散らかり様だった。どう見ても子供の宝の山にしか見えない小物がごちゃごちゃと散在し、山を成し、海を成している。服は脱ぎ捨てたままで食器も洗ったまま放置してある。雑然と言う言葉を遥かに凌駕している。
花の精油と玉ねぎが入り交じった香気が漂う。壁には埋め尽くすほどの意味不明な装飾品、狂った日付表が並んでいる。
ようやく二階へ上がる梯子を見つけた。上から聞き慣れた咳が聞こえる。
「入るけど」
彼の返事は咳で聞き取れなかったが、構わず梯子に手を掛けた。
後一段、という所で彼女の頭に謎の落下物が直撃した。三メートルの高さから真っ逆さまに墜落し、勢い余って床もろとも突き抜けた。
「ごめん。ごちゃごちゃしててさ。もう落とさないから登っておいでよ」
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