別れ、新たなる旅路

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 エルメラスは久々の重荷に耐え兼ね、四つん這いの不様な恰好でよたよたと岸壁に立った。あまりに重いので助走ができず、飛び降りて自然落下に身を任せるらしい。島の人々は盛大に一行を送り出す。 「海に落ちるかもな……」  不吉な一言を残して一行は空中に身を躍らせた。視界から一瞬で島の人々が消える。  落ちる……落ちる……、止まらない。死を覚悟した瞬間、海面すれすれで持ちこたえた。エルメラスの腹が海面をかすめる。頭上から最後の餞別として、旅の無事を祈る島の言葉が聞こえた。 「何て言っているの?」 「シェーンナ・ク・シェ二アーン。いってらっしゃい、そして無事に帰ってきなさい、だよ」  朝日の中を一行は飛んだ。カモメの群れが怯えて逃げ惑い、四方八方へ散り散りになった。下を見下ろすと、遠洋漁の船乗り達が上空を通過していく謎の巨大な獣をぽかんと見つめていた。 「お――い!」 バーバラがふざけて手を振った。
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