別れ、新たなる旅路

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 二時間ほど飛び、さすがのエルメラスも疲弊してきた。陸地はまだ見えない。 「大丈夫?」 カレンは彼の耳に口を近づけて叫んだ。強風で会話にならないのである。 「まあな。久しぶりでさすがにくたびれた」 彼も負けじと咆哮した。 「見て」  眼下の海面に白い生き物が現れた。いつか見た大白熊である。捕らえた鹿をくわえた母熊と小さな小熊が二頭泳いでいる。 「彼らは普段草原にいるんだ。鹿や野牛なんかを食べてるよ」 熊の親子を観察しているうちに、はっと気付く。  水平線の彼方にうっすら陸地が見え始めたのだ。近付くにつれて水平線が緑の地平線へと変わりゆく。深い草が密集する見事な緑の世界。背の高い古木が点々と散在し、所々に咲き誇る白い清楚な草花が華を添えていた。  歓声を上げた途端、平衡を乱されたエルメラスは耐え切れずに墜落した。激しく地面にたたき付けられ、歓声は悲鳴へ――。
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